東京都内で宿泊施設や飲食店、小売店、旅行業などを営む観光関連事業者の方へ。
「予約・販売業務をデジタル化したい」
「AIやデータを活用して生産性を高めたい」
「東京ならではの新しい観光サービスを開発したい」
そんな取組に活用できるのが、東京都の「観光関連事業者のDX・経営力強化支援事業補助金」です。
令和8年度第2回では、DX・デジタル化、新商品・サービスの開発など、観光関連事業者の生産性向上や高付加価値化につながる取組を支援します。
補助上限額は最大3,000万円。
通常の補助率は2/3以内ですが、一定の賃金引上げ計画を掲げ、要件を達成した場合は3/4以内となります。
さらに、システム開発やAI・データ解析だけでなく、設備導入、設計・施工、デザイン、翻訳など、新しい商品・サービスの開発に必要な幅広い経費が補助対象となっています。
ただし、この補助金には大きな特徴があります。
補助金を申請する前に、専門家による経営診断・支援を受ける必要があります。
そのため、「11月30日の募集締切までに申請書を作ればいい」という制度ではありません。
この記事では、対象となる事業者や補助金額、対象経費、専門家支援から申請までの流れなどを詳しく解説します。
観光関連事業者のDX・経営力強化支援事業補助金とは?
「観光関連事業者のDX・経営力強化支援事業補助金」は、東京都内の中小企業の観光関連事業者が、専門家の支援を受けながら生産性向上や高付加価値化に取り組み、観光経営力を強化する事業を支援する制度です。
主に、
DX・デジタル化
新商品・サービスの開発
などの取組を支援し、東京の観光産業の活性化や東京のブランド力向上につなげることを目的としています。
この補助金で重要なのは、単純にシステムや設備を導入することが目的ではない点です。
専門家による経営診断を通じて自社の課題を整理し、その課題を解決するためのDXや新商品・サービス開発などに取り組む仕組みとなっています。
補助上限額は最大3,000万円
令和8年度第2回の補助内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 3,000万円 |
| 補助下限額 | 100万円(申請額が100万円未満は申請不可) |
| 通常の補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
| 賃金引上げ計画あり | 補助対象経費の3/4以内 |
| 事業実施期間 | 令和9年3月15日~令和11年3月14日(最長2年間) |
補助金額が100万円未満となる申請はできません。
最大3,000万円、最長2年間の事業が対象となるため、比較的大規模なDXや新しい観光サービスの開発などにも活用を検討できます。
ただし、対象となるのは補助対象期間内に契約・取得・実施・支払い(口座引き落とし)まで完了した経費です。
賃金引上げ計画を掲げる場合は補助率3/4以内
通常の補助率は2/3以内ですが、一定の賃金引上げ計画を掲げ、要件を達成した場合は3/4以内となります。
主な要件として、
① 給与支給総額を2.0%以上増加させること
② 補助事業を実施する都内事業場の事業場内最低賃金を、毎月「地域別最低賃金+30円以上」とすること
などが定められています。
そのため、補助率3/4を利用する場合は、単に「これから賃上げする予定」として申請するだけではなく、定められた賃金引上げ要件を実際に達成する必要があります。
対象となる事業者は?
対象となるのは、東京都内で旅行者に対して直接サービスや商品を販売・提供する中小企業の観光関連事業者です。
個人事業者も対象に含まれます。
対象となる主な業種は、
宿泊事業者、飲食事業者、小売事業者、旅行事業者、その他の観光関連事業者
です。
ただし、「東京都内で飲食店や小売店を営業している」というだけで、すべての事業者が対象になるわけではありません。
宿泊事業者
旅館業法等に基づく許可を受け、東京都内で宿泊事業を行っている事業者などが対象となります。
飲食事業者
東京都内で必要な営業許可を受け、旅行者に対して東京の歴史・伝統・文化・自然・食材などに強く紐づいた、東京ならではの食事や食体験を提供している事業者が対象となります。
小売事業者
東京都内に常設店舗を設け、旅行者に対して、東京の歴史・伝統・文化・自然などに強く紐づいた東京ならではの土産や特産品などを販売している事業者が対象となります。
旅行事業者
東京都内に主たる営業所を置き、旅行業法に基づく登録を受けて旅行業を営んでいる事業者などが対象です。
その他の観光関連事業者
東京ならではの歴史・伝統・文化・自然などを旅行者が体験できるプログラムやアクティビティ等を継続的に提供・販売する事業者なども対象となります。
都内での事業年数にも要件あり
対象業種に該当していても、それだけでは申請できません。
令和8年4月1日時点で、
東京都内で継続して2年以上事業を営んでいること
さらに、今回申請する対象業種の事業を、
東京都内で1年以上営んでいること
などが必要です。
新たに東京都内で事業を始めたばかりの事業者などは、事業期間の要件を満たしているか確認しましょう。
どんな取組に使える?
対象となるのは、専門家の支援を受けて行う、DX・デジタル化や新商品・サービスの開発などによる生産性向上・高付加価値化の取組です。
募集要領では、取組例として、
東京の自然・文化・歴史の保全や継承につながる観光コンテンツの開発・提供
東京ならではの観光資源を活用したアクティビティ用設備の開発・設置
自社サイト内に予約・販売・決済システムを構築し、直販比率を高める取組
顧客データをAIで分析し、販売予測を行うツールの開発・導入
などが挙げられています。
「観光DX」という名称ですが、システム導入だけが対象ではありません。
東京ならではの新しい観光体験を提供するための設備開発や、新商品・サービスの開発なども対象となります。
一方で、老朽化した店舗の単なる改装や、調理機器・器具の単純な買い替えなどは対象となりません。
この補助金は「申請前の専門家支援」が必須!
ここは、今回の補助金で特に重要なポイントです。
通常の補助金のように、募集期間になってから申請書を作成して、そのまま提出する制度ではありません。
まず、専門家派遣の「補助金申請前支援コース」へ申し込みます。
専門家派遣は、遅くとも補助金募集締切の2か月前までに申し込むよう案内されています。
また、専門家派遣の利用申込みから派遣決定までは、通常1か月程度かかります。
専門家派遣が決定した後は、申請する取組内容によって必要な診断回数が異なります。
新商品・サービス開発等の場合:最低3回
専門家による経営診断を最低3回受けます。
1回目:現状把握・分析
2回目:課題抽出
3回目:ソリューション検討
DX・デジタル化の場合:合計最低5回
DX・デジタル化に取り組む場合は、上記の経営診断3回に加えて、さらに最低2回の診断を受けます。
4回目:ソリューション提案
5回目:ソリューションの確定(要求定義・RFP等)
つまり、
新商品・サービス開発等 → 最低3回
DX・デジタル化 → 合計最低5回
の専門家診断が必要です。
専門家の助言を受けながら自社の現状や課題を整理し、補助金で取り組むべき具体的な内容や経費を明確にしていきます。
専門家診断後に「支援証明書」を取得
専門家診断によって取組内容が明確になったら、その取組や経費が補助対象となるか、東京観光財団(TCVB)へ確認します。
補助対象となることが確認できた場合は、診断を担当した専門家へ「支援証明書」の作成を依頼します。
その後、支援証明書の内容に沿って申請書類を準備し、補助金の申請へ進みます。
ここで重要なのが、
支援証明書に記載されていない取組や経費は、補助対象にならない
という点です。
そのため、「補助対象経費に書かれているから購入できる」と考えるのではなく、専門家の診断・助言を受けながら、補助事業として実施する内容を固めていくことが重要です。
補助対象経費は?何に使える?
観光関連事業者のDX・経営力強化支援事業補助金では、大きく分けて「DX・デジタル化経費」「設備導入費」「新商品・サービス開発費」が補助対象となります。
ただし、対象経費として認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 補助事業を実施するために必要最小限の経費
- 補助対象期間内に契約・取得・実施・支払い(口座引き落とし)まで完了する経費
- 使途・単価・規模などを確認でき、補助事業に係るものとして明確に区分できる経費
- 財産を取得する場合は、所有権等が補助事業者に帰属する経費
具体的に何に使えるのか、対象経費ごとに見ていきましょう。
① DX・デジタル化経費
デジタル技術を活用した自社の生産性向上や、新商品・サービスの開発・提供などに直接必要となる新たなシステム構築、ソフトウェア導入、クラウド利用などの経費が対象です。
システム開発・構築費
新たなシステムやアプリケーションの開発・構築を専門会社へ外注する際に必要となる経費です。
自社業務の生産性向上や、自社の商品・サービスを販売するためのシステムなどが対象となります。
ただし、申請時までに要件定義等を完了し、仕様や機能などが具体的に決まっている必要があります。
また、補助対象期間内に試験運用や試験運用後の改善まで含め、システムを完成させる必要があります。
開発したシステムを他社へ販売したり、有料で利用・貸出したりすることを想定しているものは対象外で、自社で利用するシステムが対象です。
ソフトウェア導入費
新たなソフトウェアを導入するための経費です。
ただし、ソフトウェア導入費だけを単独で申請することはできません。
新たなシステムや商品・サービスの開発に係る経費とセットで申請する必要があります。
また、WordやExcelなどの汎用性のあるソフトウェアは対象外です。継続して利用するソフトウェアについては、補助対象期間内の経費のみが対象となります。
クラウド利用費
新たなクラウドサービスを利用するために必要となる経費も対象です。
対象経費の例として、
初期費用
- サーバー初期設定費
- アプリケーション構築費・専門カスタマイズ費
- データ移行費
- 専用アプリケーションの利用マニュアル作成費
月々の利用料
- サーバー利用料
- アプリケーション利用料
- 専らクラウド利用のためにサーバーへ接続する通信費
などが挙げられています。
月々の利用料については、補助対象期間内に実際に利用し、所定の期限までに支払いまで完了した分が対象です。
また、クラウド利用費だけで申請することはできず、新たなシステムや商品・サービスの開発に係る経費とセットで申請する必要があります。
データ取得・解析費
新たなシステムや商品・サービスを開発するために必要となるデータの取得・解析費も対象です。
具体的には、
- ビッグデータの取得
- AI(人工知能)の導入・利用
- データ解析サービスの利用
などが挙げられています。
こちらも単独申請はできず、新たなシステムや商品・サービスの開発に係る経費との組み合わせが必要です。
② 設備導入費
DX・デジタル化による生産性向上や、新商品・サービスの提供・販売に直接必要となる設備・機器の開発、構築、設置などにかかる経費です。
据付費・運搬費も含まれます。
募集要領では、
- アウトドア・アクティビティ用の独自設備の製造・設置
- 東京ならではの新しい文化体験設備の施工
- 独自開発するシステムの運用に必要な特殊機器の購入
- 自社サービスに合わせた独自ロボットの開発・製造
などが例示されています。
一方で、老朽化した設備の単なる買い替えやアップグレードは対象外です。
一般的なテレビ・洗濯機などの電化製品や家庭用機器、中古品、自社以外に設置する設備・機器なども対象外となります。
また、リース・レンタルの場合は補助対象期間内に新たに契約したもの、割賦の場合はすべての支払いが補助対象期間内に終了するものに限られます。
単純に「設備が欲しい」というのではなく、新たなDXや商品・サービスを実現するために必要な設備なのかが重要です。
③ 新商品・サービス開発費
新しい商品・サービスの開発に直接必要となる経費も対象です。
外注・委託費
開発の一部を外部の専門事業者、専門機関、教育機関、研究機関などへ外注・委託する場合の経費が対象となります。
具体的には、
- 設計・施工
- 外注加工・試験
- デザイン
- ライティング
- 翻訳
- 専門機関との共同研究
- 特殊な運搬・搬入・設置
などが挙げられています。
一方、開発後の生産・販売に係る経費、専門家による指導・支援・コンサルティング費用、広告宣伝費は対象外です。
産業財産権出願・導入費
開発する商品・サービスに係る産業財産権の出願(調査を含む)に必要となる経費や、必要な産業財産権を他の事業者から譲り受けたり、実施許諾を受けたりするための経費も対象です。
ただし、この経費だけを単独で申請することはできません。
また、補助対象期間内に出願手続きを完了する必要があり、出願後の審査請求、登録料、維持年金などは対象外です。
称号・認証・格付け・記録などの取得についても対象になりません。
見積書の取得にも注意
補助対象経費を申請する際には、見積書にもルールがあります。
1件100万円(税抜)以上の業務委託や購入などは、原則として2社以上の見積書が必要です。
同じ委託先からの見積もりを複数に分け、それぞれ100万円未満とすることは認められません。
また、100万円(税抜)未満の場合でも、1社以上の見積書が必要です。
さらに、「○○関連費」「一式」など、具体的な業務内容・数量・単価・成果物等が分からず、価格の妥当性を確認できない経費は対象外となる可能性があります。
そのため、見積書を取得する段階から、何を、いくつ、いくらで導入するのかが分かるようにしておくことが重要です。
補助対象外となる経費にも注意
対象経費として記載されている費用でも、条件を満たしていなければ対象外となります。
たとえば、申請書に記載していないものを購入した経費や、補助対象期間外に契約・発注・取得・実施・支払いを行った経費、補助事業に関係のない物品購入・外注・業務委託、帳票類に不備がある経費などは対象外です。
また、前半で解説したとおり、支援証明書に記載されていない取組や経費も対象になりません。
「補助対象経費一覧に書かれている=必ず補助される」というわけではないため、専門家の診断・助言を受けながら事業内容と経費を具体化していきましょう。
申請期間はいつまで?
令和8年度第2回の募集期間は、
令和8年(2026年)10月19日(月)~11月30日(月)まで
です。
申請方法は、郵送またはJグランツによる電子申請です。
Jグランツによる電子申請の場合は、11月30日(月)16時までに申請を完了する必要があります。
また、Jグランツを利用する場合にはGビズIDプライムアカウントが必要です。募集要領では、アカウント発行まで通常2~3週間かかると案内されているため、未取得の場合は早めに準備しましょう。
申請期限だけを見ていては間に合わない?
この補助金は、本申請の受付期間だけを確認して準備を始めると、申請に間に合わない可能性があります。
なぜなら、本申請前に専門家派遣・経営診断・支援証明書の取得が必要だからです。
専門家派遣は、遅くとも補助金募集締切の2か月前までに申し込むよう案内されています。
また、利用申込みから専門家派遣の決定まで通常1か月程度かかり、その後も新商品・サービス開発等なら最低3回、DX・デジタル化なら合計最低5回の診断を受けます。
そのため、
「11月30日までに申請すればいい」
と考えるのではなく、専門家派遣から逆算して早めに準備を進めることが重要です。
審査は「書類審査+面接審査」
募集締切後は、まず書類審査(一次審査)が実施されます。
一次審査を通過した申請者については、さらに面接審査(二次審査)が行われ、その結果を踏まえて補助対象事業者が決定されます。
最大3,000万円という大型の補助金だからこそ、
「何を導入したいのか」だけではなく、「自社にどのような経営課題があり、その取組によってどう生産性や付加価値を向上させるのか」
まで整理しておくことが重要です。
採択後も専門家の伴走支援を受けながら事業を実施
この補助金では、申請前だけでなく、交付決定後にも専門家による伴走支援が用意されています。
申請前に専門家と経営課題を整理し、補助事業の内容を具体化したうえで申請し、交付決定後も専門家の助言を受けながら事業を進める仕組みとなっています。
そのため、単にシステムや設備の導入費を補助するだけではなく、専門家の支援と補助金を組み合わせて、観光関連事業者の経営力向上につなげていくことが、この制度の大きな特徴です。
こんな観光関連事業者におすすめ
この補助金は、たとえば自社予約・販売・決済システムを構築したい事業者、AIやデータ分析を活用したい事業者、東京ならではの新しい観光商品・サービスを開発したい事業者、新しい観光体験に必要な独自設備を導入したい事業者などに活用が考えられます。
一方で、単純な設備の買い替えや一般的な電化製品の購入、広告宣伝などを目的とする制度ではありません。
自社の経営課題を解決するためにどのような取組が必要なのかを整理したうえで、活用を検討しましょう。
まとめ
令和8年度第2回「観光関連事業者のDX・経営力強化支援事業補助金」は、東京都内の観光関連事業者によるDX・デジタル化、設備導入、新商品・サービス開発などを支援する補助金です。
補助上限額は最大3,000万円、通常の補助率は2/3以内。一定の賃金引上げ要件を満たす場合は3/4以内となります。
対象経費には、システム開発・構築、ソフトウェア導入、クラウド利用、AI・データ解析、設備・機器の開発・設置、設計・施工、デザイン、翻訳、産業財産権の出願などがあります。
一方、単なる設備の買い替えや一般的な電化製品、広告宣伝費などは対象外です。
そして、今回特に押さえておきたいのが、本申請前に専門家の支援を受ける必要があることです。
新商品・サービス開発等の場合は最低3回、DX・デジタル化の場合は合計最低5回の診断を受け、取組内容を具体化して「支援証明書」を取得したうえで申請します。
募集期間は令和8年10月19日(月)~11月30日(月)ですが、本申請の締切だけを見て準備するのではなく、専門家派遣から逆算して早めに動くことが重要です。
「自社は対象になる?」
「このシステムや設備は対象経費になる?」
「自社に活用できる補助金を知りたい」
など、補助金の活用をご検討中の方は、早めに情報収集と準備を進めておきましょう。
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