ゼロエミッションと販路拡大を両立する東京都の支援策
東京都では、温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「ゼロエミッション東京戦略 Beyondカーボンハーフ」を推進中です。その中核をなす施策のひとつが「ゼロエミッション推進に向けた事業転換支援事業(販路拡大助成金)」です。
この制度は、環境に配慮した製品やサービスを展開する中小企業(東京都内に本店または事業所がある中小企業・個人事業主)が、展示会出展・Web制作・広告など販路拡大の取り組みに対して補助金を活用できるという非常に実用的な内容です。
支援概要と対象条件
支援内容のポイント
- 助成率:対象経費の3分の2以内
- 助成上限額:150万円(税抜ベース)
- 助成対象期間:2025年11月1日~2026年11月30日
対象となる製品分野(以下のいずれかに該当)
- 再生可能エネルギー(太陽光発電、VPP等)
- ゼロエミッションビル(省エネ機器、IoT制御等)
- ZEVモビリティ(EV部品、バイオ燃料等)
- 水素エネルギー(燃料電池、製造・貯蔵技術等)
- サーキュラーエコノミー(リサイクル素材、食品ロス対策等)
- フロン対策(ノンフロン製品など)
- 気候変動適応策(防災・環境保全技術等)
申請対象となるのは、東京都内に本店や事業所を有する中小企業や個人事業主で、上記いずれかの分野に該当する製品やサービスを自社で製造・販売していることが必要です。
対象経費の詳細
この補助金で認められる対象経費は、大きく「販路開拓費」と「販売促進費」に分類されます。
ただし、販売促進費のみの申請は不可であり、必ず販路開拓費を含める必要があります。
区分 | 内容 | 助成限度額(税抜) |
---|---|---|
展示会参加費 | 小間料・装飾費・資材運搬費・会場借上費など | 上限なし(全体で150万円以内) |
EC出店登録費 | 楽天市場・Amazonなどへの初期登録費用 | 20万円 |
Webサイト制作費 | 新規作成または既存サイトのリニューアル費用 | 20万円 |
印刷物制作費 | パンフレット・チラシ・カタログなど | 20万円 |
広告費 | インターネット・新聞・雑誌などの広告掲載費 | 20万円 |
動画制作費 | 商品・サービスのPRや活用事例を紹介する映像 | 50万円 |
💡 注意:申請は「販路開拓費(展示会出展など)」を必ず含めること。販売促進費(印刷・動画・広告)のみでは助成対象になりません
スケジュールと申請手順
主なスケジュール(令和7年度)
項目 | 日程 |
---|---|
エントリー期間 | 2025年4月24日(木)~8月29日(金)17:00 |
電子申請(Jグランツ) | 2025年8月4日(月)~8月29日(金)17:00 |
採択通知 | 2025年10月末予定 |
助成対象実施期間 | 2025年11月1日~2026年11月30日 |
申請の流れ
- GビズIDプライムアカウントの取得
- 公社HPからエントリー
- 必要書類をJグランツで提出
- 書類審査・交付決定
- 助成事業実施 → 実績報告 → 助成金の支給
提出書類は事業計画、商品説明、登記簿、納税証明など7〜8点。
活用事例:戦略的な申請で販路を広げる
① 再生可能エネルギー製品(VPP対応)の欧州進出
A社(都内エネルギー機器メーカー)は、太陽光と蓄電池の連携システム(VPP)を欧州で販促するため、展示会出展費+英語カタログ制作費を申請。助成により海外バイヤー獲得に成功しました。
→ 成果:展示会経由で1,500万円以上の契約を獲得。
② サーキュラーエコノミー(バイオプラ容器)のSNS展開
B社(食品容器メーカー)は、食品残渣から作ったバイオプラ容器をPR。動画制作+SNS広告+オンライン展示会を組み合わせ、飲食チェーンから受注を獲得。
→ 成果:広告経由のリードが月間300%増。
③ ZEV部品(EV用断熱材)の販路拡大
C社(断熱材メーカー)は、高耐久EV部品を訴求。Webサイトの英語対応と展示会出展を組み合わせて海外商社にアプローチ。
→ 成果:海外ディーラーとの契約が成立。
④ フロン対策商品(ノンフロン冷蔵庫)を業界特化販促
D社(厨房機器メーカー)は、ノンフロン冷蔵庫の導入事例を動画化。業界団体の展示会と組み合わせて販促を行い、営業ツールの信頼性を向上。
→ 成果:導入社数が前年比1.6倍に。
よくある質問と落とし穴
Q:展示会と動画広告、同時申請可能?
A:はい、組み合わせ可能です。ただし助成上限(150万円)内で調整が必要。
Q:オンライン展示会は対象?
A:リアルタイムで商談可能な仕組みがあれば対象です(例:チャット機能あり)。
Q:GビズIDって何?
A:電子申請に必要なID。発行に1〜2週間かかるので早めに取得しましょう。
Q:書類の記載ミスで不採択になる?
A:なります。事業計画の内容・数字の整合性はしっかりチェックしましょう。
Q:販売促進費(印刷物、動画、広告費)だけ申請してもいい?
A:できません。
販売促進費を申請するには、必ず販路開拓費(展示会出展費・EC出店登録費・Web制作費など)とセットで申請する必要があります。
印刷物や動画広告のみを単独で使いたい場合は対象外になるので注意してください。
※出典:FAQ Q19より
Q:東京都内に支店があれば申請できますか?
A:本店または事業所(支店・営業所など)が東京都内にあれば対象になります。
まとめ:環境対応と事業拡大を一緒に進めるチャンス
東京都の「ゼロエミッション販路拡大助成金」は、単なる補助制度ではありません。環境価値の高い商品・サービスを持つ中小企業が、資金の壁を超えて社会的インパクトを広げる手段として機能します。
助成制度の活用で得られるのは金銭的支援だけではなく、ブランド力の向上・新市場への接点・社内の環境意識の向上といった波及効果も大きいのが特徴です。
脱炭素社会に貢献しながら販路を広げる――この補助金は、まさにその両立を実現するための第一歩と言えるでしょう。
📌公式ページ:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/zeroemi_hanro.html
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