~工程ごとに人手を削減し、“自社専用の省力化設備”で生産性を高める~
🏭 はじめに:製造業の省力化は“人手を削る”ことではない
中小製造業の多くが抱える問題は、「人手不足」「熟練者依存」「工程の属人化」です。
これらの課題に真正面から取り組む制度が、中小企業省力化投資補助金(一般型)です。
この補助金の最大の特徴は、
➡ “オーダーメイド型の省力化設備”の導入に対して補助が出るという点。
カタログ掲載の既成製品ではなく、自社の課題に合わせて構成された設備投資である必要があります。
📘 補助金の概要(2025年度・一般型)
次回公募締切/第3回:2025年8月下旬(予定)
項目 | 内容 |
---|---|
補助率 | 中小企業:1/2、小規模・再生事業者:2/3(※1,500万円を超える部分は1/3) |
補助上限額 | 最大1億円(従業員数に応じて750万円~8,000万円/特例で1億円) |
補助対象 | 工程の省人化・自動化・効率化に資するオーダーメイド性のある設備・システム |
特記事項 | カタログ登録製品に限らず、未登録・セミオーダー構成の設備も対象 |
採択率(第1回) | 68.5%(応募1,240件中、採択848件) |
※設備のカスタマイズ性や自社の工程に特化しているかが、採択における“肝”となります。
✅ なぜ「オーダーメイド設備」が求められるのか?
一般型では、「省力化カタログ」掲載の製品をそのまま購入する形では原則採択されません。
それは、この制度が単なる機械購入ではなく、
『人に依存している工程を、どこまで設備に任せられるか』という投資戦略を問う制度
だからです。
つまり、設備の組み合わせ、専用治具の設計、工程最適化の仕組みを自社にあわせてカスタマイズしなければなりません。
🛠 採択事例から見る「実際に通った設備」とは?
第1回採択結果(公式発表)から、製造業における代表的な採択事例を抜粋してみます。
導入設備 | 目的 | 採択の理由 |
---|---|---|
溶接ロボット+3Dスキャナー+治具構成 | 熟練工の属人作業を標準化 | ワーク形状に応じた認識処理と動作調整が可能で、高い省力化効果あり |
自動包装・搬送ライン(複数設備連携) | 梱包・出荷工程の省人化 | 工場レイアウトに合わせて動線最適化されており、即時効果あり |
AI画像検査装置+専用照明制御ユニット | 目視検査の省力化+品質安定 | 画像解析+照明環境を最適化する構成が評価 |
CNC旋盤+加工指示データ連携装置 | 加工+後工程を無人化 | 夜間稼働が可能に、設備投資の費用対効果も明示できた |
これらはすべて、単なる市販品の購入ではなく、工程課題に合わせて“構成”された設備です。
📍【公式採択事例】溶接工程の省力化に成功した中小企業のストーリー
■ 背景と課題
精密金属部品を製造するある企業では、熟練者によるTIG溶接がボトルネックでした。
- 作業は全て手作業で、月720本を処理するのに月240時間以上を要していた
- 熟練技術者の高齢化により、将来的な人材確保に不安あり
- 若手への技術継承も難しく、品質のばらつきも課題に
■ 導入した構成
- 3Dスキャナー搭載ロボット溶接システム(4構成で構築)
① 産業用ロボット
② 3Dスキャナー(オーダーメイド)
③ 溶接機本体
④ 自動ポジショナー(角度自動調整)
項目 | 導入前 | 導入後 |
---|---|---|
作業時間/本 | 20分 | 6分 |
月間処理数 | 720本 | 同等 |
月間削減時間 | – | 約168時間 |
年間削減人件費 | – | 約252万円相当 |
投資回収年数 | – | 約3.5年 |
■ 波及効果
- 人手不足の解消+品質の安定化+生産性向上が同時に実現
- 余剰人員は品質管理部門へ再配置され、受注率や対応力も向上
- 補助金を活用して「設備構成に明確な根拠」があることが高評価に
📊 審査で見られる「定量効果」のポイント
審査においては、数字で語ることが採択の鍵となります。
評価項目 | 例 |
---|---|
作業時間削減 | 1日3時間 × 月20日 = 月60時間 |
年間人件費削減 | 60h × 12ヶ月 × 1,500円 = 約108万円 |
工程の自動化/削減 | 手作業6工程 → 自動化3工程 |
投資回収期間 | 設備導入費600万円 → 年間効果120万円 → 回収約5年(理想:3~5年) |
これらを「現状→課題→導入→効果」という流れで書き出すと、高評価につながります。
✍️ 採択されるための申請書の構成とは?
補助金申請書で押さえるべき構成は以下の通りです。
- どの工程に問題があるのか?
- それをどうやって設備で解決するのか?
- 結果、どれだけの“省力化効果”が出るのか?(数値)
- なぜその構成・設備を選んだのか?(比較・検討)
- 加点要素(賃上げ目標・BCP策定)も網羅すること
補助対象になる「構成」の実例
構成タイプ | 補足説明 |
---|---|
ロボット+専用治具+3D認識構成 | 製品ごとの動作最適化が必要で、熟練工の代替を目指す |
AIカメラ+照明制御システム | 目視検査の属人化排除、合否判定の標準化 |
自動梱包+搬送ライン(複数設備連携) | 出荷ラインの省人化、倉庫配置と連動することで全体効率が向上 |
CNC旋盤+無人稼働支援ツール | 加工~測定~後処理までの工程連携、夜間無人化も視野に |
✅ まとめ:中小製造業にとって“最適な制度”
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、
「人に頼る工程を、設備で標準化する」ことに投資できる制度です。
ポイントは以下の3点:
採択ポイント | 解説 |
---|---|
工程の特定 | 属人化・非効率な工程を明確に |
オーダーメイド構成 | 設備を組み合わせ、自社仕様に最適化 |
定量効果の提示 | 時間・人件費・回収期間など、数字で語れる内容に |
人に依存しない仕組みづくりを進めたい製造業にとって、非常に実用的な制度です。
単なるコスト削減ではなく、今後の事業継続の基盤をつくる投資として、ぜひ検討すべき支援策だと言えるでしょう。
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